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   村長は“ルイ”についてこう語る。
 「二匹のルイは大昔、海からやって来た。そして湖に棲みついた。ルイは決まって
月の出る晩に岸辺に上がって来る」

 別の男が続ける。
 「ルイは、おじいさんのそのまたおじいさんの代からいる。二匹だ。そして村人たち
を沢山殺した」

 ルイは、人間が近づくと、水面に浮かび上がり、カヌーの上に飛び上がって沈めて
しまう。ルイに殺されて死んだ人の墓もあるという。

  1年前、二匹のルイにカヌーを襲われ必死で逃げ延びた若者の話によれば、ルイ
は尻尾をV字状に突き立て、いかにも怒っているようだったという。
 水面に浮かんだり沈んだりしながら、まるで蛇のように泳ぎ、尻尾は平たくて大きく、
左右に振っていたそうだ。

 だが、彼に描かせたルイの姿は、白井氏にはジュゴンかもしれないと思えた。だが、
ジュゴンが人を襲うことはあり得ない。それに、ルイはかなり大きな動物のようだ。

 ジャングルを抜け、いよいよダカタウア湖に辿り着いた白井氏。
 ルイは水草(普通の金魚藻)を食べているという。水は冷たくなく、よく澄んでいる。
 だが、魚は一匹もいない。

 湖にはワニも多く(ブッシュの豚を食べている)、一晩で5、6匹は獲れるが、あまり
大きなものはいないそうだ。

 ポール少年によると、ルイは正面に突出している半島によって左右にくびれた部分
のちょうど中間あたりの、“ダリロム”と呼ばれる地点にいるという。
 そこは少し凹んでいて、その穴の底に沈むように眠っているらしい。
 そして大きい方のルイは東側に、小さい方は西側にいるともいう。

 湖は静かだが、これだけの話を聞かされた後では、カヌーで渡ってみることはさすが
に断念せざるを得なかった。探検には、モーターボートを始め、重装備が必要だ。
 「ヨシッ、仕事が一段落すれば十分計画を練って、もう一度その準備に備えよう」
 そう決心して、白井氏は山を降りるのであった。



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